コラムトエ

兵庫県西宮市にある久我美術研究所から発信する美術に関する「コラムと絵」を載せていきます。

絵を描くのが上手くなる方法、その105

前回の終わりに「細部を描写しないで全体の印象をつかむ練習」と書いたけれども、それはどのような絵かというと、上に掲載したベルト・モリゾの静物画が例として適当だろう。一見すると未完成のようだが、サインが入っているので作者は出来上がっていると考…

絵を描くのが上手くなる方法、その104

前回の最後に述べた「奥行きはほどほど出ればよい」という話の続き。静物画を描いていて、奥行きがうまく表現できず平板な感じの画面になってガッカリすることがあるかもしれない。しかし、奥行きが浅くなったからといって失敗したと考えるのは短絡的だろう…

絵を描くのが上手くなる方法、その103

前回の立体感の続き。静物画を描いていて、物の立体感がうまく出せないと悩んでいる人は多いと思う。だが前回提案したように、「立体感は弱くてよい」と考えるなら自作についての見方が変化して、自信をもって描けるのではないだろうか。ところで、「立体感…

絵を描くのが上手くなる方法、その102

私は教室の生徒の作品に接していて、時折、すごくいい絵だなあと感心させられると述べてきた。そして、それらの作品にはいくつかの共通点があることを指摘しておこう。今回はその共通点の一つである「物の立体感が弱い」を取り上げて、前回までの提案の話を…

絵を描くのが上手くなる方法、その101

前回の続き、というか、「その95」から続けている提案の話の続き。 静物画を描くときはモチーフ全体を見て色彩の印象をうまく捉えるとよいと前に述べたが、好例を示してさらにしつこく話そう。上に掲載したのはマネの作品である。主役のモチーフは中央の魚…

絵を描くのが上手くなる方法、その100

私は毎日のように生徒の作品(油絵や水彩画)に接しているが、時折ドキッとさせられるようないい絵を見ることがあって、大変失礼ながら、この人はこんなにいい絵を描けるのだと驚くと同時に、美術の不思議さも実感している。それで、ある人が普段よりも格段…

絵を描くのが上手くなる方法、その99

前回掲載した静物画を色彩に注目して、もう一度見てみよう。この絵のモチーフが実際に目の前にあったら、他のモチーフの色よりトマトの赤色が視線を引きつけ強い印象を与えるだろう。そういうモチーフの色彩の印象を見えた通りになるように描く、これを前回…

絵を描くのが上手くなる方法、その98

私の教室に通う人たちの油絵や水彩画を毎日のように見ていると、時折ドキッとするくらい素晴らしい作品に接することがある。それらがどのような制作プロセスから生まれてくるのか私はとても興味を持っていて、日頃からいろいろと考えを巡らせてきたけれども…

絵を描くのが上手くなる方法、その97

前回はユトリロの母シュザンヌ・ヴァラドンの静物画を掲載した。ヴァラドンは、正規の美術教育を受けていない独学の画家である。そして裸婦をモチーフにした作品をいくつも描いていて、前衛的だなと思ってしまう。当時のフランスでは、女性がヌードモデルを…

絵を描くのが上手くなる方法、その96

私は毎日のように生徒の作品に接しているけれども、時折、出来ましたと言われて絵を見てドキッとさせられることがある。そのくらい素晴らしいわけで、作者の日頃の作品を見知っている私にとって予想外だと尚更に驚くから二重にドキッとする。「予想外」とは…

絵を描くのが上手くなる方法、その95

私が日頃接している生徒の作品の中に、時折ドキッとさせられるいい絵があると前回に書いた。そこで今回は生徒が制作している様子をできるだけ思い出しながら、どのような条件が満たされるときに、どのような理由でドキッとするいい絵が生まれるのかを考えて…

絵を描くのが上手くなる方法、その94

前回の最後に、「ルソーのようなタイプの画家からは学べる点が多いだろう」と書いたけれども、その説明から始めよう。ルソーのようなタイプの画家という意味は、独自性の高い画風の持ち主で、なおかつ、アカデミックな絵画技術に依存しないで作品をつくって…

絵を描くのが上手くなる方法、その93

アンリ・ルソーの描く人物は変である。人物画、とくに肖像画においてはルソーは独自のデフォルメを意図しているようだ、と考えるのは多分間違っている。ルソーの画集(タッシェン出版)の解説には、彼がどのように肖像画を制作したのかについて述べられてい…

絵を描くのが上手くなる方法、その92

前回の続きで、アンリ・ルソーについてもう少し考えてみたい。好き嫌いは別にして、趣味で絵を描いている人にとってルソーの作品は多くのヒントを与えてくれると思う。 ルソーの作品中、花をモチーフにしたものは12点知られているらしい、上の作品を見てみ…

絵を描くのが上手くなる方法、その91

この連載は、私の教室の人達のように趣味で絵を描いている人に向けて、上達するためのヒントにしてもらいたいと考えて続けている。ところで、このところ書いている話が少々まとまりに欠け分かりにくいと気付いたので、あらためて話のテーマをはっきりさせて…

絵を描くのが上手くなる方法、その90

木村泰司著「名画はおしゃべり」は、一般の美術好きにとって美術史の貴重な知識が得られる大変面白い一冊である。この本の書き出しは、「現代では洋の東西を問わず、アーティスト(芸術家)という存在が氾濫しています」と始められている。そして、「芸術的…

絵を描くのが上手くなる方法、その89

前回の話の続き。「趣味で絵を描いている人は、早い段階で自由に描くようになる場合が多い」と書くと、そんなことはない、ずっと先生の指導に従って描いているという意見があるだろう。これについて少々しつこく説明したい。 まず、プロを目指している画学生…

絵を描くのが上手くなる方法、その88

前回はイギリスの元首相ウインストン・チャーチルの作品を取り上げたけれども、チャーチルのように趣味で長く描き続けると、場合によってはプロの画家よりも優れた作品を残せる。趣味でコツコツ描き続けることには大きな利点があるからだ。それは、初心者の…

絵を描くのが上手くなる方法、その87

上に掲載したのは、イギリスの首相だったウインストン・チャーチルの作品。チャーチルの趣味は、風景の油絵を描くことだった。この作品の題名は「クトゥービーヤ・モスクの塔」で、モロッコのマラケシュの風景という。1943年に描き始め完成後に当時のア…

絵を描くのが上手くなる方法、その86

趣味で絵を描いている人は、どのような期待や願望を持ちつつ描いているのかという話の続き。今回は「絵を描いて自己表現したい」と望んでいる人へ、考えるヒントのようなことを書いてみたい。そもそもが、絵を描く行為は自己表現に他ならないと多くの人が了…

絵を描くのが上手くなる方法、その85

一口に趣味で絵を描いているといっても絵との関わり方は様々で、「レクリエーションの一つに過ぎない」から「唯一の生きがい」と思っている人まで違いは大きい。私の経験から推測するなら、気晴らし以上の、できれば生きがいになって欲しいと考えている人は…

絵を描くのが上手くなる方法、その84

「趣味で絵を描いている人は、いろんな期待や願望を持って描いている」という話の続き。今回は、「できれば生きがいにしたい」と願っている人と「知的な遊びとして楽しみたい」と考えている人に向けて、参考となりそうなアドバイスを書いてみたい。 生きがい…

絵を描くのが上手くなる方法、その83

前回の話が途中だったので続きを書こう。岸田劉生のアドバイスの「黙ってただ描け。画家はそれ一筋がよい」は、画家の心意気を示したものと思われるが、「四の五の言わずに一心に描き続ければおのずと道は開ける」みたいな精神論で私は好まない。趣味で絵を…

絵を描くのが上手くなる方法、その82

趣味で絵を描いている人は、どのような期待や願望があって描いているのだろうか。前回同様、この話題を続けてみよう。「絵がとにかく上手くなりたい」とか「コンクールに出品したい、個展を開きたい」等のはっきりした目標があり、情熱をもって制作に取り組…

絵を描くのが上手くなる方法、その81

趣味で絵を描いている人は、人それぞれの期待や願望があって描いているという話の続き。「美術(絵画)への理解を深めたい」とか「一般的な教養として身につけたい」と考えて絵を描いている人は、まず写実的に描く練習をするとよい。西洋絵画の基本は写実で…

絵を描くのが上手くなる方法、その80

前回の続き。旅行先で気に入った景色を気軽にスケッチできたら楽しいだろうなあと思ったので、それでは絵画教室で習ってみようということなら、まずは写実の練習をすることからで、鉛筆デッサンを始めるのが理に適っている。なぜなら、だいたいの遠近感の表…

絵を描くのが上手くなる方法、その79

前回最後に、「写実から離れた絵を描いていくことについて述べてみたい」と書いたのだが、このテーマは周辺からグダグダと話していかないとうまくいきそうにないので、そうすることにしよう。さて、「あまり写実的に描かなくてもいい絵になるし、そういう絵…

絵を描くのが上手くなる方法、その78

前回の最後に、「人物画や風景画をメインに描いているけれども優れた静物画も残している画家」と書いたが、そういう画家の筆頭に挙げたいのがエドゥアール・マネ(1832-1883年)だ。マネは歴史画や人物をモチーフとした作品が多いが、静物画の傑作…

絵を描くのが上手くなる方法、その77

私の教室では、ほとんどの人が静物画を描いている。花や果物や器物等をモチーフとした静物画は、絵画の基本を学習するには最適だと私は考えている。静物画が上達するためには、構図や立体感や材質感や空間を上手く表現するにはどうしたらよいかを学ぶ必要が…

絵を描くのが上手くなる方法、その76

趣味で絵を描いている人が速く上達するには、自分の好きな画家を見つけて、その画家の作品を参考にしたり手本にしたりすると大変プラスになる。私は教室の生徒に、そのようにアドバイスすることが度々ある。今回も風景画のジャンルで好きな画家を探すときに…