コラムトエ

兵庫県西宮市にある久我美術研究所から発信する美術に関する「コラムと絵」を載せていきます。

絵を描くのが上手くなる方法、その76

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趣味で絵を描いている人が速く上達するには、自分の好きな画家を見つけて、その画家の作品を参考にしたり手本にしたりすると大変プラスになる。私は教室の生徒に、そのようにアドバイスすることが度々ある。今回も風景画のジャンルで好きな画家を探すときにヒントなりそうな画家を紹介したい。ヒントになるという意味は、なんとなく好みだなあと思ったら、似たような傾向の画家を同時代で探せば見つかりやすいのではないかということ。

1830年から1870年頃にかけて、フランスのバルビゾン村に滞在し自然の風景を好んで描いた画家達がいて、バルビゾン派と呼ばれている。代表的な画家に、コロー、ミレー、ドービニー、テオドール・ルソー等がいる。注目したい画家はルソー(1812-1867年)で、彼はありきたりな自然の風景を写実的に描いて、ドラマを感じさせる雰囲気を醸し出すことに成功している。ルソーの作品は以下で。

https://www.youtube.com/watch?v=y_V8_qF9i-s

自然の風景ではなく都市の情景を描いた画家も挙げておこう。ギュスターヴ・カイユボット(1848-1894年)は、人物画や花などの静物画、そして風景画と多様なモチーフを描いていて、そのなかに都市の情景をテーマとした作品(上に掲載)がある。以下で彼の作品が見られる。

https://www.youtube.com/watch?v=7s7IUkBK9zk

都市を描いた画家としてぜひ紹介しておきたいのは、長年パリを描き続けパリで亡くなった日本人画家の荻須高徳(1901ー1986年)だ。穏やかな魅力にに富んだ写実が特徴のいい絵だと思う。

さて、最後にピサロを採り上げたい。カミーユピサロ(1830-1903年)は印象派の画家としてよく知られていて、様々な風景を描き多数の作品(油彩1316点、版画200点あまり)を残している。下記でピサロの作品978点を見ることができる。

https://www.youtube.com/watch?v=HjYod9Q32wg

ちょっと大変だが978点全部を見てみると、風景画のモチーフをどのように選んだらよいかについて、学べるところが多々あるように思う。ピサロの作品を見ての私の感想はこうだ。モネが挑戦し続けた視覚の創造があるわけでなく、セザンヌが成し遂げた絵画の革新性があるわけでなく、ゴッホのような強烈な個性の持ち主でもない。いたって平凡で無骨な絵画だが、「絵を描く行為」への並々ならぬ愛情が感じられる絵画で、他に類を見ない誠実な画風が素晴らしい。ところでセザンヌは、ピサロについて次のように述べている。

「彼は、私にとって父親であり、相談役であり、神のような人だった」

次回は、静物画のジャンルでの画家を紹介したい。