コラムトエ

兵庫県西宮市にある久我美術研究所から発信する美術に関する「コラムと絵」を載せていきます。

絵を描くのが上手くなる方法、その77

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私の教室では、ほとんどの人が静物画を描いている。花や果物や器物等をモチーフとした静物画は、絵画の基本を学習するには最適だと私は考えている。静物画が上達するためには、構図や立体感や材質感や空間を上手く表現するにはどうしたらよいかを学ぶ必要があるのだけれども、それには優れた静物画を数多く見ることも大事だろう。そこで、静物画をたくさん描いている画家を探してお気に入りを見つけるとよい。その画家の作品を参考にしたり手本にしたりすると上達速度があがると思う。

しかしながら、主に静物画を描いている画家を見つけるのは難しいかも知れない。というのも、静物画は17世紀のオランダで流行して発展したのだが、歴史画や肖像画という絵画のジャンルの格付けからいうと最も低い。画家の技量を見せるために描かれたという面もあるようで、19世紀後半になるまでは静物を主要なモチーフとして描いている画家は少ないように思うがどうだろうか。 そんな中では、静物画の評価を高めることに貢献した18世紀の画家シャルダンに注目したい。上に掲載した作品のように、彼の静物画には独特の空間の質があって惹きつけられる。

 さて、静物画が絵画の重要なジャンルとなるのは19世紀後半以降のようで、殊にセザンヌが果たした役割は極めて大きい。しかしセザンヌの作品は、写実を目指している人にとっては少なからず異質にところがあると思う。同時代なら、正統派の写実画家のアンリ・ファンタン=ラトゥール(1836-1904年)が手本になりそうに思う、私の好きな画家だ。以下で作品を見ることができる。

https://www.youtube.com/watch?v=S38Tfti_DOk

他には、たまたま見つけたのだが、器物をモチーフとした静物画が魅力的なエミール・カールセン(1853-1932年)を紹介したい。作品は以下で・・・。

https://www.youtube.com/watch?v=qlL6vNmPnR0

 カールセンはデンマークに生まれ、アメリカで活動した風景画と静物画を主に描いていた画家だ。19世紀後半以降の画家をこまめに探せば、優れた写実の静物画を描いている画家が結構見つかりそうに思う。静物画ばかり描いている画家は全体から見ると少数派かも知れないが、人物画や風景画をメインに描いているけれども優れた静物画も残している画家は多そうだ。続きは次回に。