コラムトエ

兵庫県西宮市にある久我美術研究所から発信する美術に関する「コラムと絵」を載せていきます。

2020-01-01から1年間の記事一覧

絵を描くのが上手くなる方法、その65

前回取り上げたシャガールの作品は幻想的な世界を描いたイメージ画だが、現実の世界を反映したイメージの絵もあって、上に掲載したベン・シャーンの作品がそれだ。このようなイメージ画の場合、テーマを考えて現実世界の様々な情景をイメージし、それらを構…

絵を描くのが上手くなる方法、その64

花や風景を写実的に描こうと考えて、写真を見ながらそっくりに描き写して絵にするのは、なかなか骨の折れる制作方法だ。だが無心になってコツコツ描き写す作業は好きな人にとっては楽しいもので、時間をかけた作品が完成したときの達成感は格別だろう。とこ…

絵を描くのが上手くなる方法、その63

この連載は、趣味で絵を描いている人、殊に私の教室の生徒を念頭において役に立つ話になればと思って続けている。今回は前回の続きで、描く対象を選ぶときにどのような考慮が必要か、つまりはモチーフの選び方についてのまとめを書いてみたい。 趣味で絵を描…

絵を描くのが上手くなる方法、その62

前回の続きの話をしよう。私の教室では、生徒が描くモチーフは私が用意している。切花や植物の鉢植え、果物や野菜類などで、たいていの人が見て「きれいだな、魅力があるな、描いてみたいな」と感じるようなものを選んでいる。樹根のように一部の人しか興味…

絵を描くのが上手くなる方法、その61

前回の続き。たとえ話をしよう。山道を歩いていたら大木の樹根に目がとまり、大変興味を惹かれて絵に描いてみようと思った。そこで写真を撮りスケッチをして自宅に戻ってから、それらをもとにして水彩画または油絵を描き始めたとする。これで難なく描き進ん…

絵を描くのが上手くなる方法、その60

前回の続き。教室の生徒から、「絵を描くときには何か考えを決めて描いた方がよいですか」と聞かれることがある。花を見て、きれいだなあと感じて夢中で絵を描くだけでよいのか、それとも、あらかじめ何か考えをもってそれに沿って描いていく方がよいのかと…

絵を描くのが上手くなる方法、その59

前回の続き、モチーフについて書こう。どのような対象を描こうかと考えるとき、「描きたいものを描きたいように描けばよい」とあっさり割り切ってしまうのも悪くはないだろう。それならば、上に掲載した高橋由一の「豆腐」(1877年)を見て、彼は油揚げ…

絵を描くのが上手くなる方法、その58

教室の生徒からモチーフの選び方についての質問を受けることがあるので、あらためてモチーフのことを書いてみよう。 上に掲載したのはゴッホの「靴」(1886年)で、一足の古靴のみをモチーフとした作品。とうてい美しいとは言い難いモチーフだと思うが、…

絵を描くのが上手くなる方法、その57

前回の続き。風景画を描くとき、遠近感をどう考えるかについて述べてみたい。 上に掲載したのは17世紀の画家クロード・ロランの作品で、近景・中景・遠景が見事に描き分けられ深い奥行きが表現されている。前回載せたピサロの作品と比較すると奥行きの違い…

絵を描くのが上手くなる方法、その56

前回の続き。風景画を描く場合、まずもって遠近感をうまく出したいと考えるのではないだろうか。経験を積んだ人ならパースや空気遠近法を活用して、近景・中景・遠景を描きわけて奥行きのある風景画を描こうとするだろう。遠くにある森や建物などがずーっと…

絵を描くのが上手くなる方法、その55

何回かにわたり風景画の制作の話をしてきた。私の教室の生徒には旅行などで撮ってきた写真をもとに風景画を描いている人がいて、そのようなときの参考になればと思って内容を選んでいる。それで、今回は「焦点をつくること」について書いてみたい。焦点とは…

絵を描くのが上手くなる方法、その54

風景画、特に自然を描いて難しいのは、樹々や生い茂る植物や池や川の水面、いろんな姿の山々など複雑で多彩な表情に統一感を与えて調和のとれた画面をつくることだ。そのためには、描こうとしている目の前の自然を改良する場合もあり得るだろう。 静物画を描…

絵を描くのが上手くなる方法、その53

前回の続き、風景画の中の樹木の色についてを書くことにする。私は街の景色よりも自然が豊かな風景を描くのを好むが、それでいつも苦労するのは樹々の色彩だ。樹々の色は緑かというとそんな単純な話ではないので厄介だ。樹木の種類や季節の違いで色彩が変化…

絵を描くのが上手くなる方法、その52

ある街の風景を描こうとしたら、絵になりそうな魅力的なものとそうでないものが混在しているので困ることがある。そのような場合、私は眼前の風景の切り取り方をいろいろ試してみて、構図に工夫を凝らして何とかしようとする。不要なものを省略した構図をと…

絵を描くのが上手くなる方法、その51

前回は20世紀初めのニューヨークを描いたジョン・マリンの風景画を紹介した。このような「街」をモチーフとした風景画は、西洋絵画でいうと古くはフェルメールの「デルフトの眺望」やベネツィアを描いたカナレットの作品をはじめ、殊に印象派以降の画家の…

絵を描くのが上手くなる方法、その50

旅行などに行って、気に入った景色の写真を撮って(できればスケッチをして)、それを見ながら風景画を描く場合、ちょっとゴチャゴチャしていて描くのが大変かなと思うくらいの景色を選んだ方がよい、絵にしやすいからだ。このようなことを前回は書いた。な…

絵を描くのが上手くなる方法、その49

前回の続き。前回掲載した明石海峡大橋と夕日の写真は大変美しいものだが、これを描いていい絵にするのはちょっと無理なんじゃないかと書いた。なぜそう思うかというと非常にシンプルな風景なので、描くこと(描けること)がとても少ないからだ。ほぼシルエ…

絵を描くのが上手くなる方法、その48

風景画を描こうと思ったら、まずは場所探しだろうが、絵になりそうな風景にはなかなか出会えないものだ。といっても、どのような景色を見て絵心がそそられるかは個々人の感受性の相違によって違ってくるわけで、「絵になる風景」というのは幻のようなものと…

絵を描くのが上手くなる方法、その47

前回の続きで風景画について書こうと思うが、その前にゴッホ展を見たのでそのことを少々。風景画を描くとして、写実的に描くとして、それでもやはりゴッホの風景画のような絵もあるのだということをいつも頭の片隅にしっかり置いておくことが如何に大切であ…

絵を描くのが上手くなる方法、その46

私の教室では静物画を描くことがほとんどなのだが、時折生徒から、旅行先などで撮ってきた景色の写真を見て描きたいという要望がある。今回は、そんなケースを考えて風景画の制作について述べてみたい。 まずは私が風景画を描くときにどのような方法をとって…

絵を描くのが上手くなる方法、その45

花を描く話の続きを書くことにする。油彩で描くにしろ水彩で描くにしろ、花をモチーフとしたときに結構悩むのはバック(背景)をどうするかではないだろうか。私が教室の生徒によく聞かる質問は「バックは何色にしたらいいですか?」というもので、「ともか…