コラムトエ

兵庫県西宮市にある久我美術研究所から発信する美術に関する「コラムと絵」を載せていきます。

絵を描くのが上手くなる方法、その134

印象派のような絵を描く話を続けている。印象派の絵が特に好きで、そのような絵を描きたいと思うなら、油絵や水彩画を習い始めた初歩の人でも印象派風に描く練習をすればよいと思う。先に「ふつうの絵」を描く練習をしてからと考えて、二の足を踏むことはな…

絵を描くのが上手くなる方法、その133

空を遠近感が出るように描くには、画面上方(近景)の空は青さを濃くして、下方(遠景)の空は淡くする。また、上方にある雲は明瞭に、下方にいくほどはっきりしないように描くとよい。前回掲載したモネの絵はそうなっていた。しかし空の表情は多様だから、…

絵を描くのが上手くなる方法、その132

あらかじめ念押しすると、印象派風に絵を描きたいならどうしたら上手くいくかの話を続けている。前回、モネがツボをおさえつつ適当に筆を運んでいる具体例として、空と川面を描くときのタッチの使い分けについて指摘した。それでは上に掲載した絵ではどうだ…

絵を描くのが上手くなる方法、その131

「適当のススメ」と題名をつけたいくらいの話を今回も続けたい。適当に描くことは、とても大切であるという話を前回にした。それを具体例を見ながらよりはっきりさせたいと思う。上に掲載したのは、モネの1880年作の「ヴェトゥイユ近郊のフルール島」。…

絵を描くのが上手くなる方法、その130

前回の続きで、適当に描くことについての話をしたい。 上に掲載したのはモネの作品で、「シエヌ川のグランド・ジャッテ島」(1878年)である。画面の大部分が前景の木々の幹・枝・葉で覆われている。そのために題名になっているグランド・ジャッテ島は建…

絵を描くのが上手くなる方法、その129

前回に続けて、今回も印象派風に絵を描くことについての話。 前回の文頭で次のように述べた。 印象派風の絵が描きたい人は、習い始めの最初の段階だけ、ウォーミングアップのつもりで写実画を練習するのがよい。(中略)ウォーミングアップだから、「実際に…

絵を描くのが上手くなる方法、その128

少し間が空いたけれども前回の続きを書く。 印象派風の絵が描きたいと考えている人は、習い始めの最初の段階だけ、ウォーミングアップのつもりで写実画を練習するのがよい。それによって絵具の扱いに慣れて色の作り方や塗り方のテクニックを知ることができる…

絵を描くのが上手くなる方法、その127

前回の文末に「印象派風に描く話は次回も続けたい」と書いたが、「その120」から回を重ねるごとにいつの間にか印象派絵画の解説みたいになってきたので、話の方向を軌道修正して続けたい。もともとのテーマは「印象派のすすめ」だったはずで、「その12…

絵を描くのが上手くなる方法、その126

前回はモネのルーアン大聖堂を取り上げて、建築物のアウトラインは歪んで描いても変な絵にはならないという話をした。そして、「建築物以外でも、整ったラインで形を正確に描くと印象派風の絵にならないのかと問われそうだが」と文末に書いた。今回はその続…

絵を描くのが上手くなる方法、その125

今回も写真を見て風景画を描く話をするのだけれども、印象派風に描くなら多くの点でモネの作品が参考になるだろう。色彩につては前回に少し触れたので、今回は別の角度からモネの作品を見て参考にすべき点を考えたい。 上に掲載したのは、モネが描いたルーア…

絵を描くのが上手くなる方法、その124

前回の続き。印象派風の風景画を描く場合に、写真を見て描くのもよいだろう。本来、印象主義の画家たちと同じ絵を描くのなら、キャンバスや水彩紙やイーゼル等をかついで野外に出掛け現場で制作するの一択だ。しかし、印象派風の明るくきれいな色の絵を描き…

絵を描くのが上手くなる方法、その123

前回の続き。印象派風に描く場合は、あらかじめ色彩をどのように扱うかの心積もりがあるとよいだろう。というのは、見えるがままの、見えた通りの色をおけばよいだろうと考えていたとしても、「見えた通り」の解釈は一筋縄にはいかないのである。新鮮な眼で…

絵を描くのが上手くなる方法、その122

今回も、趣味で絵を描いている人の中で印象派の絵画がことのほか好きで、それが油絵や水彩画を始めたキッカケであるなら印象派風の絵を描きましょうという話を続ける。 前回、風景画を印象派風に描くときには、景色を見た瞬間に視線が引きつけられた箇所を画…

絵を描くのが上手くなる方法、その121

印象派の絵画が殊に好きで、そのような絵が描きたいと望んでいるならどう描けばよいかの話の続き。前回はモネの積みわらの作品を例に取り、対象と対面したときの第一印象を尊重して描くことに触れた。さらにこのことを説明したい。 静物でも風景でも対象全体…

絵を描くのが上手くなる方法、その120

印象派の絵画が並ぶ美術展があると大賑わいになるから、日本人に印象派は人気が高いと言えそうだ。実際、教室の生徒に好きな画家を尋ねるとモネやルノワールなど、印象派の画家を挙げる人は多い。ラファエロやフェルメールなど古典絵画の巨匠を挙げる人も時…

絵を描くのが上手くなる方法、その119

前回掲載したのはボナールのデッサンで、現在、絵画教室でデッサンの練習に励んでいる人はそのデッサンを見て、「これは写実的に描かれていないので今習っているデッサンとは別物に見えるけれども、このようなデッサンはどう考えればよいのだろう」と疑問に…

絵を描くのが上手くなる方法、その118

私の経験から言うと、絵画教室に通って習うつもりの初心者からの質問では、「デッサンから始めた方がよいですか」と聞かれることが多い。推測するに、どうやら世間一般に絵画の基礎はデッサンだから、そこから習い始めなくてはいけない・・・これが常識とし…

絵を描くのが上手くなる方法、その117

前回同様、デッサンを習うことについて述べてみたい。さて、とても写実的な絵を描きたい人は、最初にデッサンから習った方がよい。けれども、絵画教室に通ってデッサンを習い始め自宅でも熱心に練習して、物の形や立体感や質感を的確に表現できて遠近感も出…

絵を描くのが上手くなる方法、その116

前回の、デッサンを習うことについての続きを書く。「いずれは水彩画を描きたいけれども、絵を初めて習うので最初はデッサンから始めよう」と考える人は多いと想像できる。真面目な人ほどそう考える傾向があるような気がする。もちろん、デッサンから始めよ…

絵を描くのが上手くなる方法、その115

今回は、あらためてデッサンを習うことについて考えてみる。これから絵を習おうと思っている人や習い始めて日の浅い人への参考になる話をしたい。 「今まで絵を習ったことはありませんが、絵を見るのが好きなので自分でも描いてみたいです。最初はデッサンか…

絵を描くのが上手くなる方法、その114

前回に紹介したジョン・ヘンリー・トワックトマンは滝を描くのが好きだったらしく、前回掲載の作品以外にもナイヤガラやその他の滝をモチーフにしている。いずれの作品もざっくりと描かれてはいるが、滝らしいリアリティーは十二分に表現されている。ところ…

絵を描くのが上手くなる方法、その113

前回の続き。油絵を始めたばかりの人から、中描きの段階で厚塗りをするのは分かったが、どのような色を使えばよいのかと質問されたので、それを説明したい。この段階で厚く塗るときには、原色(彩度の高い色)を使うのは避けた方が無難だ。原色を多用すると…

絵を描くのが上手くなる方法、その112

前回は岡鹿之助のエピソードを紹介した。かなり昔のエピソードだが、今に通じるところがあると思う。今回は、これもかなり昔のことだが、私の画学生時代の話から書き始めてみよう。 教授の一人に、痩身でダンディな老画家がいた。ある時、我々学生のアトリエ…

絵を描くのが上手くなる方法、その111

前回に油絵の初心者は、とりあえず厚塗りを試してみてはどうかと提案した。その理由をさらに説明したい。 油絵は水彩画と違って絵肌(マティエール)を様々に工夫でき、そしてこれが重要なのである。艷やかで筆跡のない平滑な画面、ぶ厚い絵具のタッチの跡を…

絵を描くのが上手くなる方法、その110

前回の続きで、油絵初心者に役立ちそうなアドバイスを考えていきたい。油絵を描き始めたばかりの人や、今は絵画教室に通っていない初心者にざっくばらんに話すつもりで書いていく。とりとめのない話になるかも知れないが、参考になればと思う。 油絵の描き方…

絵を描くのが上手くなる方法、その109

前回まで続けた「ものの際(きわ)」の話は一区切りとし、今回からは油絵初心者が参考にできそうなアドバイスを述べていきたい。ところで先日、たまたま含蓄のある英文を目にした。書き写してみよう。 There are no mistakes in oil painting, just happy ac…

絵を描くのが上手くなる方法、その108

前回、静物画を描くときには物の輪郭、つまり際(きわ)をどう描くかに注意を払う必要性があると述べた。物の際をどう処理するか、これはとても大事で、立体感や遠近感や空間やいろんな問題と関連している。とは言うものの、物の際の話を分かりやすく説明す…

絵を描くのが上手くなる方法、その107

このブログの「その95」から書き続けているテーマは、私がとても感心させられる生徒作品の共通点を考察して、趣味で絵を描いている人たちへ参考になりそうな提案を試みるというものだ。具体的に、静物画を描くときの提案を述べていきたい。 絵を描き始めて…

絵を描くのが上手くなる方法、その106

前回言いたかったのは、描き方の法則のようなことを学習しルール化して描くよりも、「感覚に正直になる」制作を重視することである。具体的には遠近感に関して述べたのだが、今回はさらに遠近法の扱いについて触れてみたい。遠近法というのは、狭義には透視…

絵を描くのが上手くなる方法、その105

前回の終わりに「細部を描写しないで全体の印象をつかむ練習」と書いたけれども、それはどのような絵かというと、上に掲載したベルト・モリゾの静物画が例として適当だろう。一見すると未完成のようだが、サインが入っているので作者は出来上がっていると考…