コラムトエ

兵庫県西宮市にある久我美術研究所から発信する美術に関する「コラムと絵」を載せていきます。

2022-01-01から1年間の記事一覧

絵を描くのが上手くなる方法、その117

前回同様、デッサンを習うことについて述べてみたい。さて、とても写実的な絵を描きたい人は、最初にデッサンから習った方がよい。けれども、絵画教室に通ってデッサンを習い始め自宅でも熱心に練習して、物の形や立体感や質感を的確に表現できて遠近感も出…

絵を描くのが上手くなる方法、その116

前回の、デッサンを習うことについての続きを書く。「いずれは水彩画を描きたいけれども、絵を初めて習うので最初はデッサンから始めよう」と考える人は多いと想像できる。真面目な人ほどそう考える傾向があるような気がする。もちろん、デッサンから始めよ…

絵を描くのが上手くなる方法、その115

今回は、あらためてデッサンを習うことについて考えてみる。これから絵を習おうと思っている人や習い始めて日の浅い人への参考になる話をしたい。 「今まで絵を習ったことはありませんが、絵を見るのが好きなので自分でも描いてみたいです。最初はデッサンか…

絵を描くのが上手くなる方法、その114

前回に紹介したジョン・ヘンリー・トワックトマンは滝を描くのが好きだったらしく、前回掲載の作品以外にもナイヤガラやその他の滝をモチーフにしている。いずれの作品もざっくりと描かれてはいるが、滝らしいリアリティーは十二分に表現されている。ところ…

絵を描くのが上手くなる方法、その113

前回の続き。油絵を始めたばかりの人から、中描きの段階で厚塗りをするのは分かったが、どのような色を使えばよいのかと質問されたので、それを説明したい。この段階で厚く塗るときには、原色(彩度の高い色)を使うのは避けた方が無難だ。原色を多用すると…

絵を描くのが上手くなる方法、その112

前回は岡鹿之助のエピソードを紹介した。かなり昔のエピソードだが、今に通じるところがあると思う。今回は、これもかなり昔のことだが、私の画学生時代の話から書き始めてみよう。 教授の一人に、痩身でダンディな老画家がいた。ある時、我々学生のアトリエ…

絵を描くのが上手くなる方法、その111

前回に油絵の初心者は、とりあえず厚塗りを試してみてはどうかと提案した。その理由をさらに説明したい。 油絵は水彩画と違って絵肌(マティエール)を様々に工夫でき、そしてこれが重要なのである。艷やかで筆跡のない平滑な画面、ぶ厚い絵具のタッチの跡を…

絵を描くのが上手くなる方法、その110

前回の続きで、油絵初心者に役立ちそうなアドバイスを考えていきたい。油絵を描き始めたばかりの人や、今は絵画教室に通っていない初心者にざっくばらんに話すつもりで書いていく。とりとめのない話になるかも知れないが、参考になればと思う。 油絵の描き方…

絵を描くのが上手くなる方法、その109

前回まで続けた「ものの際(きわ)」の話は一区切りとし、今回からは油絵初心者が参考にできそうなアドバイスを述べていきたい。ところで先日、たまたま含蓄のある英文を目にした。書き写してみよう。 There are no mistakes in oil painting, just happy ac…

絵を描くのが上手くなる方法、その108

前回、静物画を描くときには物の輪郭、つまり際(きわ)をどう描くかに注意を払う必要性があると述べた。物の際をどう処理するか、これはとても大事で、立体感や遠近感や空間やいろんな問題と関連している。とは言うものの、物の際の話を分かりやすく説明す…

絵を描くのが上手くなる方法、その107

このブログの「その95」から書き続けているテーマは、私がとても感心させられる生徒作品の共通点を考察して、趣味で絵を描いている人たちへ参考になりそうな提案を試みるというものだ。具体的に、静物画を描くときの提案を述べていきたい。 絵を描き始めて…

絵を描くのが上手くなる方法、その106

前回言いたかったのは、描き方の法則のようなことを学習しルール化して描くよりも、「感覚に正直になる」制作を重視することである。具体的には遠近感に関して述べたのだが、今回はさらに遠近法の扱いについて触れてみたい。遠近法というのは、狭義には透視…

絵を描くのが上手くなる方法、その105

前回の終わりに「細部を描写しないで全体の印象をつかむ練習」と書いたけれども、それはどのような絵かというと、上に掲載したベルト・モリゾの静物画が例として適当だろう。一見すると未完成のようだが、サインが入っているので作者は出来上がっていると考…

絵を描くのが上手くなる方法、その104

前回の最後に述べた「奥行きはほどほど出ればよい」という話の続き。静物画を描いていて、奥行きがうまく表現できず平板な感じの画面になってガッカリすることがあるかもしれない。しかし、奥行きが浅くなったからといって失敗したと考えるのは短絡的だろう…

絵を描くのが上手くなる方法、その103

前回の立体感の続き。静物画を描いていて、物の立体感がうまく出せないと悩んでいる人は多いと思う。だが前回提案したように、「立体感は弱くてよい」と考えるなら自作についての見方が変化して、自信をもって描けるのではないだろうか。ところで、「立体感…

絵を描くのが上手くなる方法、その102

私は教室の生徒の作品に接していて、時折、すごくいい絵だなあと感心させられると述べてきた。そして、それらの作品にはいくつかの共通点があることを指摘しておこう。今回はその共通点の一つである「物の立体感が弱い」を取り上げて、前回までの提案の話を…

絵を描くのが上手くなる方法、その101

前回の続き、というか、「その95」から続けている提案の話の続き。 静物画を描くときはモチーフ全体を見て色彩の印象をうまく捉えるとよいと前に述べたが、好例を示してさらにしつこく話そう。上に掲載したのはマネの作品である。主役のモチーフは中央の魚…

絵を描くのが上手くなる方法、その100

私は毎日のように生徒の作品(油絵や水彩画)に接しているが、時折ドキッとさせられるようないい絵を見ることがあって、大変失礼ながら、この人はこんなにいい絵を描けるのだと驚くと同時に、美術の不思議さも実感している。それで、ある人が普段よりも格段…

絵を描くのが上手くなる方法、その99

前回掲載した静物画を色彩に注目して、もう一度見てみよう。この絵のモチーフが実際に目の前にあったら、他のモチーフの色よりトマトの赤色が視線を引きつけ強い印象を与えるだろう。そういうモチーフの色彩の印象を見えた通りになるように描く、これを前回…