コラムトエ

兵庫県西宮市にある久我美術研究所から発信する美術に関する「コラムと絵」を載せていきます。

絵を描くのが上手くなる方法、その70

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前回の続き。写実的な絵で、どのようなスタイルの絵を描いていこうか考えるとき、自分の好きな画家が見つかると大変参考になる。好きな画家の作品を通して進むべき絵の方向が見えてくるからだ。写実に基本をおいて描くにしても、写実的な絵のスタイルはいろいろあるから、制作に迷いが生じることは多い。そんなときには、好きな画家の作品がヒントを与えてくれるものだ。では、どのようにして好きな画家を見つければよいだろうか。手当り次第にたくさんの絵を見ればよい、たしかにそうだが、時間がかかり過ぎるからもう少し効率よく見つけたいと思う人のために、具体的な画家名を挙げて説明していこう。

 その前に一言。「写実的な絵のスタイルはいろいろある」と前述したが、これから挙げていく画家の中には印象派の画家と呼ばれている画家も含まれている。印象派の絵も写実といってよいのかどうか。美術史とは別の話とするなら、印象派の絵の中には、「印象派の画法を採り入れた写実的な絵」として見た方がしっくりくるものがある。絵を描いている側からするとそう実感する。だから、これからの話しの中でも、そのような作品は「写実的である」と見なして述べていきたいと思う。

 さて、まずは、人物画に興味があり、クラシックな絵画が好みである人が関心を持ちそうな画家を挙げてみよう。前回紹介したジョン・シンガー・サージェントと同時代の画家で、主にイギリスで活躍したフィリップ・ド・ラースローである。上に掲載した作品を見ると大変巧みで、当時人気があった肖像画家であることも肯ける。もっとたくさんの作品を見たい人のために下にURLを載せておく。

https://www.youtube.com/watch?v=TSKmNcgPYJ4

ラースローの作品はどれも似ていてワンパターンの技巧的な絵だと評価することも可能だろう。それゆえに、職人技ともいえる彼の描法は、人物画の描き方としての技法を学ぶには分かりやすい手本だと思う。例えば、髪の毛の描き方、目を生き生きとさせる方法、鼻の高さの出し方、口元の立体感の表現、暗部と明部の肌色の使い方、人物とバックの関係をどう取るか等、学べそうなことが多い。しかし、やはりこういう絵を描くには修練が必要なデッサン力がものをいうのだが・・・。

次回も好きな画家を見つけるときに参考になりそうな画家を紹介したい。