コラムトエ

兵庫県西宮市にある久我美術研究所から発信する美術に関する「コラムと絵」を載せていきます。

絵を描くのが上手くなる方法、その42

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静物画のなかでも花の絵は描いていて楽しいもので、私の教室ではモチーフに花をしばしば用意する。何年も教室に通っている生徒は、絵になるように上手に花を活けて描くのだけれども、習い始めて日が浅い人はちょっと苦労している。画面に花を上手に配置できない(構成できない)と、単調で退屈な印象になったりバラバラで散漫な感じの絵になる。構図に問題があるわけだ。

 ゴッホは、ヒマワリの花の絵を何枚も描いている。どの作品も花の数や形、向きや配置にかなり神経をつかっていると思われるフシがある。その結果、例えば「花瓶の14輪のヒマワリ」(1888年)では、画面に心地よいリズムが生まれているし、そこに美しい調和を感じる人も多いのではないだろうか。優れた構図になっているわけだ。

ヒマワリの花1種類だけを構成するのでも大変だが、掲載したヤン・ブリューゲルの作品のように多種類の花をたくさん描くとなると、どこにどの花を配置すればよいか複雑過ぎてよほどの構成力がないと構図でつまづいてしまうだろう。花の絵に限らず、構図で失敗するといい絵にならない。そういうことだから、構図の勉強をしようと考える人は多いと思うが、今更ながら、そもそも構図の良し悪しの基準とは何だろうか。ある作品を見て、「この絵は色彩が美しい」という感想には大勢の人が共感を覚えるだろうが、「この絵の構図は素晴らしい」という意見に同感する人が多いとは限らない。構図がよいかどうかは見る人の感受性によって大きく左右されるからで、とすると、よい構図の基準を考えてもなかなか結論は出そうにないし、基準があるのかどうかも疑問に思えてくる。

美の基準となるものの一つに黄金分割があり、絵の構図にも応用されることがある。ハーバート・リードは「芸術の意味」のなかで次のように述べている。

「われわれはすぐれた芸術家はその作品の構造に黄金分割を意識的に適用するか、または本能的な造形感覚によって、必然的に黄金分割に到達すると仮定することができる。」

 構図の美しさを感じることに鋭敏な感受性の人は、「本能的な造形感覚によって」構成を行って素晴らしい構図に到達することができる。しかし、先天的にそのような優れた感受性の人は稀であるから、よい構図をつくれるようになるには、とにかく練習を重ねて構図に対しての感受性を磨こうとする気持ちを忘れないようにしたい。その上で、構図に関する本などで勉強すると鬼に金棒・・・となるかどうかは分からないがベターだとは思う。

花をモチーフとした静物画については、まだまだ書きたいことがあるので次回に続きを述べたい。