コラムトエ

兵庫県西宮市にある久我美術研究所から発信する美術に関する「コラムと絵」を載せていきます。

絵を描くのが上手くなる方法、その41

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写実的に静物画を描くとして、複数のモチーフを選ぶ場合にそれらの物の色に注目して、何色の物と何色の物を組み合わせたら美しくなるだろうと想像して描き始めるとしたら、色の選択方法としては片手落ちといえる。というのも、物の色を何色かということ(色相)だけで見ないで、その色がどのくらいの明るさ(明度)の色なのかに眼を向ける必要があるからだ。

とはいうものの、果物や花なら、それらの色が何色でどのくらいの明るさ暗さなのかが見やすいのだが、ガラス器や金属製品などはバックや周辺の物の反映や反射の影響を受けるから、それらがどのような色をしているのか、明るさ暗さはどのくらいなのかが大変見えにくい。それでも目を凝らして見てみると、例えば、水の入った透明なグラスならどうだろうか(前回のシャルダンの作品参照)。ずいぶん明るいところもあれば暗いところもある。そうすると、全体として明るい色の物とも暗い色の物とも決められない。

つまり、こういう物の色は全体として明るいか暗いかではなくて、部分部分の明暗を見極めることが大切で、また、それを描き分けられたらガラスや金属の材質感も捉えることができるというわけだ。ところで、モチーフの材質についていうと、静物画のモチーフを似たような同質の物ばかりで組むよりは、異質の物を混在させた方が変化に富んだ画面になる。果物ばかりを並べるより、ガラス器が加わった方が「絵になりやすい」といえるのではないだろうか。もっとも果物とガラス器の材質感の違いを表現できなかったなら、かえって足を引っ張ることになるのだが・・・。

材質感を表現する上でのポイントは、物の明暗のコントラストを上手に捉えることを第一にあげたい。上に掲載したマネの作品を見てみよう。白いライラックの花がガラスの花瓶に活けてある。そして、白い花とガラスの花瓶を比べると、白色の明るいところと陰になった暗いところのコントラストの描き方がまったく違う。花では、光があたって明るい部分と陰になっている部分の明暗の差は穏やかだ。それに対して花瓶では、光っているところとそうでないバックなどが透けている部分との明暗は激しいコントラストになるように描かれている。花とガラスとの材質感の違いを明暗のコントラストの違いによって描き分けている。ガラス器や金属の物の材質感を表現するのは難しいが、特に明暗のコントラストに注意して描くと上手くいきやすい。そういう描写ができる基本の技術は、写実的な静物画を描くときには必須だと思う。

次回は、静物画のなかでも花をモチーフにする場合について考えてみたい。