コラムトエ

兵庫県西宮市にある久我美術研究所から発信する美術に関する「コラムと絵」を載せていきます。

絵を描くのが上手くなる方法、その38

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上に掲載したのは、前回と同じポーラ美術館所蔵のセザンヌの作品。

この作品も前回掲載したものと同様に奇妙な絵で、テーブルが滑り台のように傾いているように見えるし、画面の左上の布からちょこっとのぞいている果物はテーブルからはみ出している。ポーラ美術館のサイトにあるこの作品の解説には・・・

「・・・本作品でもセザンヌがもたらした革新がみられる。ここにはそれまでの絵画にみられるような確固とした土台の上に積み上げられ、固定された構図はない。左端の山のように盛り上がる布によって斜面が強調された机―実際は水平なのだろうが―の上で、果物は皿から転がり落ちている。画面中央では、存在感を放つ砂糖壺が傾斜した机の支点を押さえ込むことで均衡をはかっている。果物は画面からこぼれ落ちそうな危うさを残しながら、重力に従うのではなく計算された構図によって、かろうじてその場所にとどまっている。本作品は、絵画が目に見える世界の忠実な再現ではなく、人工的な構築物であることを思い起こさせる。」

少々分かりにくいけれども、セザンヌの初期を除く静物画には、このように現実的でない空間が作られていて不思議な点が多くある。セザンヌが意図していることを考えていくと、そういう表現になるのは当然の帰結だ・・・ということかも知れないが、それを考察して説明するのはとても難しいことなので、これ以上セザンヌに深入りするのは今はやめようと思う。

ところで、セザンヌに限らずいろんな画家の静物画を見ると、リンゴなどの果物やワイン瓶などの器物や布やその他いろんな物がテーブルに並んでいるのだが、なかに日常生活では到底お目にかかれない情景だなあと思えるほど不自然に、あるいはシュールに物がでテーブルに並べられている絵がある。静物画とはそんなものだと了解してしまうのではなくて、次回からは静物画のそのようなモチーフのことやモチーフの組み方(構成)についてじっくり考えていきたい。