コラムトエ

兵庫県西宮市にある久我美術研究所から発信する美術に関する「コラムと絵」を載せていきます。

絵を描くのが上手くなる方法、その33

f:id:gaina1995:20190412182041j:plain

 

前回は人物を写実でリアルに描くのなら、西洋の古典絵画が最高の手本となると述べた。そう書いたのは古典絵画を模写して練習するとよいという意味で、同じ絵が描けることを目標とするわけではない。古典絵画の人物画は理想像と考えるのがよい。古典絵画をそっくりに再現したいと思っても、そもそも使用している絵具等の画材が現在と異なるし、それらの使用法も含めて古典技法を知らないと無理である。古典技法をマスターして制作している画家もいるが、趣味で描いている人にはかなりハードルが高いだろう。

水彩にしろ油絵にしろ写実的に描きたいとしても古典絵画のリアルさは敬遠して、もっと新しい時代の人物画、前回ふれた小磯良平など日本人画家の人物画を目標とするなら、手を伸ばせば届きそうな親近感を感じつつ制作に励めると思う。日本人画家の作品なら、すこし手間がかかっても実物を見る機会を得られることが多いから勉強しやすい利点がある。

 ところで、ここまでは写実的でリアルな人物画について述べてきたが、私自身が描くときにそうだし趣味の人にも結構勧めてみたいのは、ある程度は写実であってもそれほどリアルでない人物画を描くことで、そういう絵なら写真を活用する手法も可能だろう。ちょっと例を挙げるならロートレックゴッホゴーギャンやルソーなどで、近代以降の数多の画家がそうだ。ゴッホの人物画は古典絵画に比べると大変ぎこちないが、人物がとても生き生きしていて素晴らしいし、ルソーの描く人物は子供が描いたみたいで奇妙だが、絵から目が離せなくなる不思議な魅力がある。それぞれの画家が個性的な人物画を描いている。

奇妙な人物画といえば、上に掲載した渡辺崋山の「鷹見泉石像」(国宝)は不統一な表現で変わっている絵だ。顔は洋画風に陰影を施し立体感を表現しているが、衣服を着た体や背景は従来の日本絵画風に平面的である。それでも、写実の人物画として素晴らしい傑作であり感心してしまう。

続きは次回に・・・。