コラムトエ

兵庫県西宮市にある久我美術研究所から発信する美術に関する「コラムと絵」を載せていきます。

絵を描くのが上手くなる方法、その74

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前回は何人かの風景画家を採り上げた。今回も続けて参考になりそうな風景画家を挙げてみよう。その前に、魅力のある水彩画で知られていた安野光雅が出演している番組を紹介したい。

https://www.youtube.com/watch?v=4MsCaNQau4I

このビデオで面白いのは、安野氏がルネサンスの描き方にならって見取り枠を使用し正確に形をとって描こうと試みたら、機械になったような気持ちになり、これはダメだなと言って途中でやめてしまうところである。あとで、関連してゴッホの絵と比べたり遠近法は適当でよいみたいなことも語っていて、彼の絵画観が表れていて私は興味を持ったのである。写実で描くとしても風景は人物に比べてかなり自由に描けるモチーフで、例えば人物画だと形の狂いはそのまま不自然さに直結するが、風景画だとずっと融通がきくから、安野氏の話も写実で描くことの範囲と考えてよいと思う。

 ちょっと思い出したが、この3月1日に107歳で亡くなられた美術家の篠田桃紅さんが102歳の時に撮ったドキュメンタリーがあって、彼女が書から抽象画に進んだ理由を話している中で、書では「川」という字は3本しか線を引いてはいけないと決まっている、4本や5本じゃダメなんです、どんな風に書いてもそれではアレンジに過ぎないから、それが嫌になった、このようなことを言っている。これは絵画でいうと写実から離れていく動機と同じではないか、少なくとも動機の一つであると思う。

さて前置きが長くなったが本題に戻って、趣味で絵を描いている人がはやく上達するためには、好きな画家を見つけると大変プラスになるという話の続き。前回は挙げなかったがぜひ紹介したい画家がいる。上に掲載した作品の作者、アンリ・ル・シダネル(1862-1939年)で、以下で多くの作品が見られる。

https://www.youtube.com/watch?v=4jYzKz7yX_8&list=PLgNrOIUPSOX2b6lh3mZzpUjQkaPY3qxG-&index=243

 シダネルの作品世界は独特の雰囲気を醸し出していて、見るほどに汲めども尽きぬ興趣が感じられて私はとても惹かれる。

次は以前にも採り上げたアメリカの画家、ジョン・シンガー・サージェント(1856-1925年)。優雅な肖像画で有名だが風景画も素晴らしく、特に水彩画は絶妙なところがある。以下でその水彩画がたっぷりと見られる。

https://www.youtube.com/watch?v=ysHIlpDsEDI

ついでに、同時代のアメリカの画家ウイラード・リロイ・メトカーフ(1858-1925年)とオーストラリアの画家アーサー・ストリートン(1867-1943年)も挙げておこう。どちらも一般には知られていないマイナーな画家のように思うが、どうだろうか?

https://www.youtube.com/watch?v=j9Kk0mXE9wM

https://www.youtube.com/watch?v=0iyX8E0EGvo

次回も続けて風景画家を紹介する予定。