コラムトエ

兵庫県西宮市にある久我美術研究所から発信する美術に関する「コラムと絵」を載せていきます。

絵を描くのが上手くなる方法、その30

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この連載は趣味で絵を描いている人、とくに私が主宰している教室の皆さんに参考となるようなことを書こうとして続けている。今回は、今まであまり触れてこなかった「写真みたいな絵」を練習していくことについて述べてみたい。

美術展を見に行くと、写実的な絵の前で「写真みたい!」という言い方をして感嘆している観客に出会うことがある。そういう折に私は、写真みたいに描けているその技量にビックリしているだけなのか、それとも素晴らしい絵だから感動しているのかどちらなんだろうと疑問に思うことが多い。当然ではあるけれども、写真みたいに描けているからといって必ずしもいい絵とは限らないから。

ともあれ写真みたいな絵を描くためには、相応の技術が必要不可欠であることは間違いない。そのため私の教室では、希望する人以外には写真みたいな絵を目標とするのを勧めることはない。相応の技術がともなう絵に取り組むのは、人によって向き不向きがかなりあるからで、不向きの人にとっては大変困難な練習の連続になって絵を描くのが苦行になってしまう。反対に向いている人、そういうリアルな表現が性分に合っている人は、コツコツ気長に練習していくと徐々に技術がついて思うような写実画が描けてきて、上達している実感を持てて確かな自信になるし、何よりも描くのが楽しいだろう。

さて、「写真みたいな絵」といっても簡単に一つに引っくくるのはあまりに乱暴で、リアルな絵にもいろいろなスタイルが見て取れるから、自分はどういう「写真みたいな絵」を目標として練習していくのがよいかを考える方が上達しやすいと思う。考えるためには知る必要があるから、例えば、ルネサンスバロックなどの古典絵画から現代のスーパーリアリズム風の絵画までのリアルさがどう違うかや、油絵・アクリル画・水彩画など画材による難易度を大体でも勉強する価値はあると思う。リアルな絵を描くといっても、おそろしく難しいスタイルを目標としてしまったら思うようには進まない。

リアルな絵で私が最近感心したのは、アンナ・メイソン著「世界でいちばん美しい細密画」(日本文芸社)に載っている花やフルーツの水彩画だ。この本は、これから絵を始めよう、そしてリアルな絵を描けるようになりたいと思っている人にピッタリの目標を示してくれる。美しい花を目にして色も形もそっくりに再現したいなあと願うのは、絵を描いている人の自然な心の動きだろう。この本は、そういうストレートな表現欲を大切にしていて絵を描く楽しみを教えてくれる。

 

続きは次回に。

上に掲載したのは、アンナ・メイソン著「世界でいちばん美しい細密画」からアネモネの花。