コラムトエ

兵庫県西宮市にある久我美術研究所から発信する美術に関する「コラムと絵」を載せていきます。

絵を描くのが上手くなる方法、その25


前々回、画集を見ることの大切さを書いたところ、教室の生徒から「どのような画家の画集を見るとよいですか?」と質問を受けた。それで私は、「手始めに、一番好きな画家の画集をご覧になってはいかがでしょう」と答えたのだけれども、普通の書店や図書館には画集をおいていない画家がお気に入りの場合もあるわけで、そういうときには、インターネットで作品の画像を検索するのがよい。

ところで、長年絵を描いている人でも案外に画家の名前を知らないことが多く、ある画家の作品を例に持ち出して、そういう人と絵画の技法や表現などについて話そうとしても、そんな画家は見たことも聞いたこともないと返答されると話がそこで止まってしまって、戸惑ってしまうことが時折ある。それでも、自分は絵を描いているだけで研究者ではないから画家の名前なんてどうでもよいと、乱暴なことを主張する人はさすがにあまりいないと思う。
西洋絵画でいうと、ルネサンスからピカソやダリの時代くらいまでのいろんな画家をたくさん知って、積極的に彼らの作品をよく見て勉強しようと心がける気持ちがあった方が、制作上の視野が狭くならなくてよいように思う。数多くの画家の知識を得るには、簡単なものでも西洋絵画史の本を一読するのが最適だが、ルネサンスから近代までだと読むのが大変だと思うなら近代絵画史に的を絞って、例えば、高階秀爾著「近代絵画史 上・下」(中公新書)などを読んでみると、絵が上達することからいっても随分と役立つに違いない。

いろんな画家をたくさん知って様々なスタイルの絵を見比べると、自分の中にある絵の世界がずっと広がる。今まで絵とはこんなものだと思っていたら、とんだ考え違いだったことが分かって意外にも描くことが前より楽しくなってきた・・・こういうことも起こりかねない。
また、「私が本当に描きたかったのはこういう絵だった!」という、予想もしなかった自己発見を体験することになるかも知れない。
趣味で絵を描いている人でも描くことだけで満足しないようにしたいと思う。

掲載したのは、ロココを代表する画家、フラゴナールの作品。