コラムトエ

兵庫県西宮市にある久我美術研究所から発信する美術に関する「コラムと絵」を載せていきます。

絵を描くのが上手くなる方法、その24


前回の続きを書く。
伸び悩みを感じ出したときに、いろんな画家の画集をよく見て絵の仕組みを研究すると、今後の制作に新たな展開をもたらすヒントが得られることがよくある。そして、画集を見ていてとても好きな絵だと感じた作品をさらに深く理解したいと思ったら、模写をしてみるとよい。図版を見ながら、形や色や調子(明暗)を細部までできる限り正確に写そうとすることが大事で、そうすると微妙な差で絵の雰囲気がガラッと変わってしまうことが分かって勉強になる。
ただ、ぼかしやにじみを多用している水彩画の場合は、細部まで正確に写そうとしても無理なので、細部よりも全体の印象がとてもよく似るように描いてみるとよいだろう。

さて、伸び悩みを解消するための練習をもうひとつ提案したい。
それは試しに一度、作品をとことん描き込んでみることだ。いつもならここで筆をおくというところで終わりにしないで、さらに描き続けて、もうこれ以上は金輪際描き進められない、これが限界だと思うところまで描いてみる。そうすると、案外、想像もしていなかった表現にたどり着いていることが時々ある。描き終えた直後は失敗したと思っても、しばらく(1週間後、1ヵ月後?)してから見直すと、失敗したと思っていたけれでも結構いい絵だと自画自賛したいくらいに見えてくることもある。
そう思えればしめたもので、「この絵のこういう点がよい」を再現するつもりで次の作品を描くようにすると一歩前進できるかも知れない。

とことん描くのは、油絵ならいくらでも何か月でも描き続けられる。しかし水彩画の場合は、あまりしつこく描いていくと色は濁ってくるし紙は傷んでくるしで描き進めにくいのだが、カオス状態になって汚くなったら思い切って画面全体を洗ってみよう。それからまた描き進めてみよう。こういう無茶な描き方は水彩画らしい魅力を失わせてしまうけれども、今回は目的が限界まで描くことなのでどんどん描いていって、場合によっては色鉛筆や不透明水彩絵具を併用してもよいだろう。
ただ使用する水彩紙は、アルシュやウォーターフォードなどの高価で良質の紙を使いたい。高価な紙は丈夫で乱暴な使用にも耐えてくれる。

掲載したのは、ドイツのルネサンス期の巨匠、デューラーの水彩画(部分)。