コラムトエ

兵庫県西宮市にある久我美術研究所から発信する美術に関する「コラムと絵」を載せていきます。

絵を描くのが上手くなる方法、その14


この連載は、絵を描くことを趣味にしている人から「どうしたら絵を描くのが上手くなるのですか」と問われたなら、私が答えるだろうと思うことをまとめたものだ。週に1回程度、絵画教室に通っている人をイメージして、そういう人に話しているつもりで書いてきた。
今回は、水彩画や油絵を習い始めた人が、どのくらいで上達を実感できるようになるのかについて述べてみたい。

私の教室の生徒に聞いてみると、自宅ではほとんど描かないと話す人が大多数で、そうすると週に1回のレッスンで水彩画を1枚仕上げるとしても年間で50枚ほど、時間のかかる油絵だと10枚ほどにしかならない。ということは、習い始めて半年や1年で上達を実感するのはとうてい無理というものではないだろうか。制作量が少なすぎる。
やはり、週に1回程度なら教室に通うことを3年は続ける必要があるだろう。気長に楽しみながら腰を据えて描き続けることが、のちのち大きな実を結ぶことになると思う。
それでも、教室に通う合間に自宅で制作したり、以前に述べたようにスケッチをする習慣を身につけたなら、上達のスピードがずっと速くなるのは言うまでもないことだ。

ところで、週に1回のレッスンよりずっと少ない、月に1回程度の教室通いというスローペースの人の場合はどうだろうか。
自宅で練習するなら話は違ってくるのだが、そうでなくて月に1回教室で描くだけでは、せっかくつかんだ描く感触を次に描くときには忘れてしまっている。こういう人は絵を描くことを楽しむ気持ちを大事にしそれで満足して、上達することは二の次、あまり期待しない方がよいだろう。
描く間隔が相当あいたとしても、描いた枚数に比例して上手くなるのではないかと考える人がいるとしたら、残念ながら私はそういう例を見たことがないと言うしかない。枚数に比例して上達するのは、ある程度の制作ペースを守ってこそで、月に1度とか不規則に気が向いたら描くというのでは、いくらよいセンスを持っていたとしても上達するかどうか疑問だ。
何年たっても上手くならないと感じている人の中には、練習のペースに問題がある人も多いのではないかと思う。

掲載したのは、ボナールの「窓」