コラムトエ

兵庫県西宮市にある久我美術研究所から発信する美術に関する「コラムと絵」を載せていきます。

絵を描くのが上手くなる方法、その11


上に掲載したのは前回と同様、アルフレッド・ウォリスの作品。
帆船の帆が海と同じ色なので分かりにくいし、右下の灯台と右上の家が同じ大きさで描かれていて、近景と遠景の区別もない。けれども、とても惹きつけられる絵だなあと感心してしまう。
70歳になってから独学で絵を描き始めたウォリスは、多少なりとも絵を習ったことがある人なら配慮するような西洋絵画の約束事に全然とらわれていない。それでも、こんないい絵ができてしまう。
何だか絵画教室に習いに通わなくても、独学で好き勝手に描いていると傑作ができそうに思われてくるのだが、それはまた別の話になる。

絵を独習しようとすると、たいていの人は技法書の類を見て練習しようとするだろう。そうすると、絵を描く上での約束事を覚えることばかりに熱心になりがちで、肝心の「美の表現」に必要な感覚を鍛錬することがおろそかになってしまう。それでは、いつまでたっても型にはまった退屈な絵しか描けないのではないか。
やはり、どこかに習いに行って適切な指導を受けることが必要だと思う。適切な指導を受けることで、絵を描く上で大切な感覚を磨いていくことができるだろう。また、趣味で絵を描く人には、すでに述べたようにプロのような技術の習得は必須ではないが、いい絵を描くための絵心は大いに養う必要がある。

独学で絵を描いていって、かなりの高みにまで辿り着けるのは、ゴッホのように特別な才能のある人か、ウォリスのような自由な精神を持っている人だけだと私は考えている。そうでない多くの普通の人たちは、絵画教室みたいなところに通いレッスンを受けて、そのなかで自分なりの絵心を思い切り発展させて、そうしたら誰にも真似のできない傑作が自然と生まれてくると思うのだ。
ところで、絵心とはどういうものだろうか。どうすれば養えるのだろうか。
次回はそのあたりについて述べたいと思う。