コラムトエ

兵庫県西宮市にある久我美術研究所から発信する美術に関する「コラムと絵」を載せていきます。

絵を描くのが上手くなる方法、その6


初めて絵を習うのに、水彩画や油絵から始めてしばらく描いていたけれども、やはりデッサンを練習した方がいいかなと感じてきたなら、本格的なデッサンよりもスケッチをすることを勧めたいと思う。
「本格的な」とは、石膏デッサンが最たる例だが、モチーフを目の前に置いてよく観察し、時間をかけてしっかりと描き込み、立体感や材質感をリアルに表現したものという意味で、このようなデッサンを継続的に練習していくのはとても大変だ。時間もエネルギーもたくさん必要だから、「それなりに上手くはなりたいが、趣味だから楽しく描きたい」と思っている人には、かなりハードルが高いだろう。だから、「デッサンもした方がいいかな」と思い始めたら、本格的なデッサンをするよりも、もっと気軽に描けるスケッチをしよう。

スケッチとは、デッサンのなかでも主に線を使って短時間で簡単に描いたものをいう(より素早く簡略に描いたものはクロッキー)。上に掲載したのはピカソが描いたスケッチで、左側の婦人像のように線描だけでもよいし、右側の男性像のように陰影を入れてもよいから、こんな感じで簡潔に描いてみよう。さらにスケッチするときの注意を述べると・・・

1、鉛筆を使って描くのがよいが、消しゴムはできるだけ使わない。描き間違った線が残っていてもよい。
2、モチーフは、最初は、リンゴ1個、玉ねぎ1個など果物や野菜にしよう。人物や風景はすこし練習してからがよい。
3、形が正しく描けなくて変な絵になっても全然気にしないで、もう1枚描けばよい。
4、できたら毎日描くのがベスト。朝食後10分とか、就寝前の15分とか習慣にするとよい。
5、これが最も大切だが、上達しないなあと思っても飽きずに気長に続けること。だんだんと「こんな落書きみたいなことをしていて、何の役に立つのか」と思い始めて止す人が多いように思う。
まだ100枚も描いていないのに!

スケッチを続けると、誰でも必ずその成果があらわれてくるのは間違いない。ただし、1ヵ月や2ヵ月では無理な話で、1年とか2年とか、そういう単位で考えてほしい。1日10分か15分でよいのだから続けられるのではないだろうか。
具体的に、どういう成果が期待できるかというと、まずは絵を描くときの手の動きがよくなる。流暢な(?)鉛筆遣い、筆遣いができるようになる。
次に、ものを観察する眼力がつく。今まで、もの見ていたようで本当はあまりよく見ていなかったことに気付くだろう。だから、見慣れているものを描いても新たな発見があるし感動がある。
それから、徐々にではあるけれど、自分の絵の方向性が見えてくる。自分が本当に描きたい絵はどのようなものであるのか・・・こういうことが分かってくると、絵を描くのがどんどん楽しくなってくるだろう。
でもこれには、スケッチをするだけでは少々不足で他にも必要なことがある。しかし、スケッチをたくさん描くことが大いに助けになることだけは確かだと思う。

ところで、「自分の絵の方向性が見えてくる」とは、どういう意味なのか。この話の続きは次回にしたいと思う。