コラムトエ

兵庫県西宮市にある久我美術研究所から発信する美術に関する「コラムと絵」を載せていきます。

ゴッホの手紙、1


画家の人生を知らなくても、その画家の作品を鑑賞するのになんら支障はない訳で、画家がどのような人物であろうと、例えばカラヴァッジオのような殺人者であろうと作品がすべてである。画家の人となりを知ったがために、かえって作品を色眼鏡で見てしまう危険がある。
最近こういうことがあった。私は「ジョルジョ・モランディ」(岡田温司著、平凡社新書)を読んで、モランディの狭量な人柄を知ってしまい、今までとても尊敬していた彼の作品の崇高さにキズがついたように見えて、ちょっと気分がよろしくなかった。やはり、画家がどんな人間でどのような人生を歩んだかは、作品を理解する上では関係ないと考えておこうと思う。

しかしながら、作品をより深く理解するために、その画家の人間性や人生を知っておくのが不可欠な場合も稀にはあって、ゴッホはまさにそんな画家の一人であろう。ゴッホの芸術の特異性は、ゴッホという人間を知らなければ容易に解き明かせないと思われる。
ところで、ゴッホという人間の内面を知ろうと思ったら、彼の手紙を読み解くのが最もよいようだ。このコラムでは、これからしばらくゴッホの手紙に親しみ、ゴッホの芸術について思いをめぐらせてみたい。

掲載したのは、ゴッホの1887年の作品。