コラムトエ

兵庫県西宮市にある久我美術研究所から発信する美術に関する「コラムと絵」を載せていきます。

中川一政


画家たち、4

NHKラジオにラジオ深夜便という番組があり、2月17日(木)の深夜(つまり18日)の「わが心の人」というコーナーで、洋画家の中川一政に師事した小杉小二郎氏が、晩年の中川の思い出を語っていた。それによると、中川は元来、弟子をとらない主義だったらしい。先生に就くというのは、先生からエサをもらって飼育されているようなものだから、そんなことではいけません・・・という考えだったそうだ。
中川は現場主義で、現場でモティーフの風景(例えば箱根駒ケ岳)と格闘するような厳しい姿勢で、大変な集中力を持って描いたそうな。それから、中川の趣味は、相撲やボクシングなどの格闘技をテレビで見ることだったという。
また、中川は、一番体調の良いときに絵を描き、それほどでもないときに書や文章を書き、体調が良くないときはハンコを彫って(篆刻)いたそうだ。

さて、ほとんど独学で絵を学んだ中川ならではの、弟子をとらない理由というのが面白いなと思う。面白いとは思うが、やはり初歩の頃は、絵は先生について学んだ方がよいと考える。しかし、ある期間が過ぎたら、先生から離れる方がよいのではないか。先生から離れるといっても、誰からも教わってはいけないという意味ではなくて、もっといろんなところから自分に必要な養分を吸収するということ。
例えば、展覧会。展覧会に足繁く通うことで、いろんな作品から養分を摂取できるというもので、私が最近とても滋養に富んだ養分を摂取できた展覧会は、現在、京都伊勢丹で開催中の「ラファエル前派からウィリアム・モリスへ」展。この展覧会で、ウィリアム・ベル・スコットの水彩画を初めて見れたことは、なかなか得がたい経験だった。

掲載したのは、展覧会で見たウィリアム・ベル・スコットの水彩画、「水門と湿地のある風景」(1865年)。