コラムトエ

兵庫県西宮市にある久我美術研究所から発信する美術に関する「コラムと絵」を載せていきます。

麻生三郎展


画家たち、2

掲載したのは、麻生三郎の「赤い空」(1956年、東京国立近代美術館蔵)。

現在、京都国立近代美術館では「麻生三郎展」が開催されている。展覧会チラシの麻生三郎の紹介文を要約すると・・・
麻生三郎(1913〜2000年)は、東京生まれ。初めは前衛的な絵画に関心を持つが、1938年にヨーロッパを旅して写実の重要さを再認識する。1943年に靉光松本竣介らと「新人画会」を結成。戦後は、「赤い空」の連作に代表されるような、人間存在の核心に迫る表現を切りひらいていく。麻生の作品に描かれる人体は、周囲の空間に押しつぶされそうになりながらもその存在を主張し、濃密なせめぎあいが画面に生まれている。混沌とした画面から浮かび上がってくるその姿は、人がこの世に存在することのかけがえのなさを、見る者に訴えかけてくるだろう。

展覧会チラシには以上のようなことが書かれているが、私が感じたことをすこし付け加える。麻生の描く絵のモチーフは、人体のみといってもよいくらいで、街が加わっている作品もあるけれど、やはり圧倒的に人間を描いているわけで、その人間は社会と対立し、ぎしぎしときしみ合っている関係である。作品を凝視していると、だんだんと息苦しくなるし不安になる。
また、社会と人間(個人)のきしみはだんだんと高まっていきそうで、ついには個人が解体されてしまうのか、あるいは社会と融合してしまうのか、はたまた個人個人がしっかりと自由に存在できるようになるのか、たいへん難しい問題を考えさせられる。
こういう作品を見ていると、つくづく絵とはなんだろうかと考え込んでしまうはめになるのだが、それが私にとってはこの展覧会を見た一番の収穫ということになろう。