コラムトエ

兵庫県西宮市にある久我美術研究所から発信する美術に関する「コラムと絵」を載せていきます。

ゴッホの手紙、12


ゴッホは第476信で、テオに絵具を送ってくれた礼を述べているが、「あとになって、やっぱりタンギー爺さんに絵具を頼まなかったのを残念に思った」とも書いていて、そのあとはこう続く・・・・

「それで得になることも別にないがーむしろ反対かもしれないーでも、実に変わった人物だ、だから、よくあの爺さんのことを考える。もし会ったら、僕からよろしくと忘れずに伝えてほしい。」

タンギー爺さんもゴッホから変わった人物だとは言われたくなかろうが、ゴッホはかなり好意を持っていたのだろう、彼の肖像も念入りに描いている(上に掲載した作品)。
ゴッホはそもそも人間が好きなのだが、うまく他人との関係が築けない。彼の伝記を読むとそう思わざるを得ない。この手紙の中でも、人とのつながりを欲している様を窺わせる箇所がある。

「(前略)やっぱり人間が根本問題のような気がだんだんしてくる。その意味では色彩や石膏で仕事をするよりも肉体でじかに仕事をすべきだし、同じ理由で、画を描いたり商売をしたりするよりも子供を作った方がましだ。しかし友人を持っていることを考えると生きがいを感じる、その友人たちもやっぱり孤独なんだ。」

ゴッホのこの手紙では、印象派の色彩について触れているところもあって、「印象派がはやらせたすべての色は変色する、生で大胆に用いる必要がある訳だ、時がちょうどよく柔らげてくれるから」と述べているのは、やや皮肉が混じっていて面白い解釈だと思う。