コラムトエ

兵庫県西宮市にある久我美術研究所から発信する美術に関する「コラムと絵」を載せていきます。

ゴッホの手紙、15


ゴッホはテオへ1888年5月4日の日付の手紙を書いて、あくる日、5月5日の日付でもテオへ手紙を書いている。その手紙の中で、アルルの女性や肖像画について語っている箇所がある。引用してみよう・・・・

「有名なアルルの女について、僕がどう感じているかわかるかい。たしかに、実際魅力的だ、だが以前のようなことはない。どちらかと云えばマンテニヤよりもミニヤルに近く、彼女たちは凋落期にある。それにしても美しく、とても綺麗であることに変りはない。ここで対象にしているのはローマ風のタイプについてだけだが、―一寸うるさくて通俗的でもある。もちろん例外もある!フラゴナールの絵にあるような女もいる―そしてルノアール風のも。すでに描かれてしまったあとでは自分のものにはできないものなのだろうか。
あらゆる点からみて、女たちと子供の肖像を描くのがわれわれにできる一番いいことだ。しかし、それをやるのは僕の役ではなさそうだ。打ってつけのベラミ風の適役だとはわれながら思えない。(中略)
僕も仕事をやって行く、あっちこっちに僕の仕事が残るはずだ、でも風景画におけるクロード・モネのように、顔を描くのは、一体誰がやるのだろう。君は僕がそれをやるような気がするかい。ロダンか、色を使わないから、彼ではない。だが、未来の画家は、いまだかつてないほどの色彩家であるべきだ。マネはその下地を作った、だが君も知るように印象派の連中は色彩でマネを追越してしまった。未来の画家とは、小さなレストランで生活し、入歯を何本もはめて仕事して、アルジェリア兵のゆく女郎屋へ出入りする僕のような男だとは想いも及ぶまい。(後略)」

ゴッホの、肖像画に挑戦しようする意欲が見て取れる。
掲載したのは、ゴッホの「アルルの女」。