コラムトエ

兵庫県西宮市にある久我美術研究所から発信する美術に関する「コラムと絵」を載せていきます。

ゴッホの手紙、7


このコラムを書くにあたってテキストとして参照しているのは、岩波文庫の「ゴッホの手紙(上・中・下)」であり、これに採り上げられている弟テオへの手紙は、1886年3月の日付がある第459信から後のものである。ところで、みすず書房から1969年に出版された「ファン・ゴッホ書簡全集(全6巻)」に載っているゴッホの手紙の第1信は、1872年8月のテオへの手紙であり、全文を紹介すると・・・

「手紙をありがとう。無事に帰宅したときいてうれしかった。最初の数日間はきみがいないのが寂しかった。夕方帰ってもきみの姿がみえないので妙な気持ちだった。
いっしょに過ごした日々は楽しかった。たびたびすばらしい散歩もしたし、あちこち見物もやったね。
まったくたまらない天気だ。この暑さではきみもオイステルウェイクまで歩いて行くのがさぞ大へんだろう。昨日は博覧会を祝って競馬レースがあったが、イルミネーションと花火は天候が悪くて日延べになった。だから、ちょうどよかったよ、わざわざその見物のために残っていなくて。ハーネベークとロース家のひとたちからよろしくとのことだ。」

1869年以来、ゴッホはグーピル商会の画廊の店員となっていた。テオはオイステルウェイクの学校にいて、ロース家に下宿していた兄を訪ねて数日過ごしたのだった。1872年というと、ゴッホは19歳の青年だ。
手紙の文章からは、とても仲のよい兄弟のほほえましい姿が想像される。1873年からは、テオもグーピル商会に勤めるようになる。

掲載したのは、1888年のゴッホのデッサン。