コラムトエ

兵庫県西宮市にある久我美術研究所から発信する美術に関する「コラムと絵」を載せていきます。

ゴッホの手紙、6


ゴッホからテオへの1888年3月10日付けの手紙は、「手紙と同封の100フラン札を有難う」と書き出されている。ゴッホはその手紙の中で、画家の互助を目的とした組合についての構想を熱心に述べている。その部分を抜き出してみよう。

「売れた絵の代金を芸術家同士で平等に分配することに賛成を求めるよりも、おそらく画商や蒐集家に印象派の絵を買ってもらう方がやさしいかもしれない。しかし、芸術家が団結して協会に作品を提供し、売れた金を配分して、少なくとも協会の会員が仕事を続けられるように保障すべきだ。」

ゴッホは具体的にもあれこれ考えていたようだ。例えば、ドガ・モネ・ルノアールシスレーピサロに、それぞれ10点の作品と、毎年一定額を納めることに同意してもらうとか、ギョーマンやスーラやゴーギャンなどを勧誘するなどのアイデアを述べている。手紙には、「毎日芸術家協会のことを考えつづけているので構想がどんどん発展する」とも書いている。

どうしてゴッホが、芸術家たちの組合構想に熱中していくのか、その心境の本当のところは正確には理解しにくい。たんに、孤独であったとか生活が困窮して絵を描くことに集中できないとかの理由だけではないだろう。ゴッホが理想とする芸術と社会の関係もあったろうと思う。
しかし、画家がお互いに助け合う協同組合というものは、そもそも画家という個性の強い人たちを考えた場合、どうしてもうまく行くとは思えないのだが。

掲載したのは、ゴッホの1888年の作品。